前ブログからの転載です。 ちょっと長いですが・・・

我々獣医師はワンちゃん・ネコちゃんに避妊や去勢手術をお勧めすることが多いです。

理由はいくつかありますが、「将来の病気の予防」、「望まれない交配を防ぐ」、「問題行動を防ぐ」などがあるからです。
病気の種類としては乳腺腫瘍、子宮蓄膿症、オスメスそれぞれの生殖器の腫瘍、肛門周囲腺腫瘍、会陰ヘルニア(うんちが出ない)、前立腺肥大などがあります。「腫瘍」というのは悪性と良性にわかれます。
小さい時に避妊去勢手術をするのはかわいそう…と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、病気になってからでは手遅れの場合もありますし、ペットさんへの手術の負担も歳をとるにつれて大きくなります。ただ避妊去勢手術をすることによって悪影響が及ぶことがまれにあります。

その中でも縫合糸(縫うのに使った糸)によって起こされる「縫合糸反応性肉芽腫」という病気でたくさんのワンちゃん達が苦しんでいます。
この病気は手術に使った糸が体の中で炎症・拒絶反応を起こし、身体にシコリ(肉芽腫)を作ってしまう病気です。特にミニチュアダックスさんに多く、なぜかネコさんではほとんどみられません。ダックスさんはもともと免疫異常による病気が多い犬種なのです。

症状や特徴としては腰の辺りの皮膚の化膿、お腹の中や股のシコリ、食欲不振、発熱、嘔吐、排尿困難など様々です。シコリが出来てしまった場合それを手術で切除しなければいけない…と手術で起こった病気を手術で治すという何とも辛い結果になってしまいます。

ところでなぜ避妊去勢手術だけが問題になっているのでしょうか?他の外科手術ではどうなのでしょうか?実は海外ではこの病気に対する研究があまり進んでいないのです。というのもミニチュアダックスさんは日本で特に多く飼育されている品種なのです!

今のところ、「手術後に肉芽腫ができだして、その後発症するまでに長い年月がかかる?ため、比較的若い時期に行う避妊去勢手術が目立っている」のも一つ要因か?と言われていますがまだまだ謎が多い病気なのです。
現在分かっている事は、患者さんの多くがミニチュアダックスさんで、全体のほとんどが避妊去勢手術時に「絹糸(けんし)」という糸を使っているということです。

絹糸とはヒトの医療でも獣医療においても、手術時に縫合したり組織を結んだりするために古くから使われている糸です。しかし絹糸は動物の研究において、体の中で強い炎症反応を引き起こし続けていることがわかりました。ただこの病気は過去の手術で絹糸が使われていた子に多く発症しているものの、絹糸以外の糸を使用しても肉芽腫になっている患者さんもいますし、絹糸を使っていてもまったく平気な子もいます。

ですから必ずしも絹糸だけが悪いのではなく患者さん側の体質的な異常が相重なって関与していると思われます。しかし他の糸でもなる可能性があるとはいえ、絹糸による発症率は断然高いです。

どうしたら防ぐことができるのでしょうか?
当たり前ですが絹糸を使わなければいいのです。でも未だにヒトの医学でさえ今でも使われ続けています。
縫合糸反応性肉芽腫はどの動物にも起こる可能性があります!手術に「絶対」安全はありません。
だからと言ってじゃあ手術しなきゃいいんだ~というわけにもいきません。

少なくともダックスさんに対しては「原価が安い」や「使い慣れている」という理由だけで手術に絹糸を使わず、できるだけ患者さんにやさしい組織反応の少ない糸を使うべきですね。


おぎわらペットクリニック秋田       秋田県秋田市の動物病院
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